昨日(9/15)は、以前からお世話になっている某大学の先生にお声掛け頂き、日本電子キーボード音楽学会(JSEKM)の第19回全国大会:電子ピアノ・ICT部会にて、弊社のオンライン講座についてのプレゼンテーションの機会を頂きました。
JSEKMの大会は、対面としてはコロナ禍直前の2019年に参加して以来でしたが、多くの研究者の方々と新しく知り合いになり、大変有意義な1日を過ごさせて頂きました。
文部科学省が2019年に打ち出したGIGAスクール構想により、全国の小中学校ではネットワーク環境や生徒1人1台の情報端末の提供などが進められて来ましたが、その後にコロナ禍などの影響もあり、オンライン・コミュニケーションやAIなどのテクノロジーが急速に進歩しました。
そうした中で試みられて来た様々な新しい取り組みを、次のステップに向けて整理し再構築するというのが、現在の音楽教育界の課題の一つになっているようです。
こうした流れを受けて行なった私のプレゼンテーション内容の一部は、8/6に公開した同名のブログ記事でご覧頂けます。
(ブログ記事の方は、その後の日没事件の影響で、タイトルを変更しています。)
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ところで、当日は他の参加者(主に学校の先生方)と様々な意見交換をする機会が得られましたが、音楽教育でも楽譜は伝統的に大きな役割を担って来たため、Finale日没の問題は学会に対してもネガティヴな影響を与えていることがひしひしと感じられました。
現在の学校教育の現場において主に用いられる楽譜作成ソフトウェアはFlatやMuseScoreのため、Finaleが開発・販売終了となったことの直接的な影響は、出版業界や音楽制作業界ほど大きくはなさそうです。
これまで作成して来た膨大なFinaleファイルも、Finaleを使用するOS環境を変えない限り、当面は今まで通り使うことができます。
学会における影響は、製品の終了もさることながら、Finaleが1988年の誕生以来、30年以上に亘り積み重ねて来た楽譜作成テクノロジーの文化が途絶えたことも大きいようです。
例えば、日本音楽教育学会の新型コロナウイルス感染症対策「音楽教育支援プロジェクトチーム」のウェブサイトには、国内販売代理店のオウンド・メディアであった「クラブ・フィナーレ」に掲載された記事「Finaleファミリー製品:オンラインでの共同制作、音楽教育への活用」が紹介されたことがあります。
また、この日の学会発表の中にも、同じく「楽譜作成ソフトの導入メリットを考える」記事シリーズを参考資料として取り上げているものがありました。
「クラブ・フィナーレ」に掲載されて来たこれらの大量の記事は、代理店契約の終了と同時に全て公開不能となり、残念ながら現在は読むことができません。
僅かばかりのフォローではありますが、クラブフィナーレに掲載されていた記事の中には、Finale開発元のMakeMusic社が公開したブログを日本語訳したり、日本のユーザー向けに再編したものもいくつかあります。
例えば、前述の「楽譜作成ソフトの導入メリットを考える」シリーズは、確か以下の3本で構成していたと思います。
濱瀬元彦氏の記事:作曲・演奏活動の傍らでチャーリー・パーカー研究に従事し、楽譜作成ソフトウェアで採譜し作成したデータベースを元に研究書を執筆。
仲間将太氏の記事:楽譜作成ソフトウェアを用いて、大量の楽譜を短い納期で作成、レコーディングやライヴに求められる厳しいスケジュールに対応。
ジョナサン・ファイスト(Jonathan Feist)氏の記事:バークリー音楽大学の出版部局「バークリー出版(Berklee Press)」にて、楽譜に関する教科書を執筆・出版。併せて楽譜作成ソフトウェアの使用方法を教える全12回のオンライン講座を開講。
このうち最後のジョナサン・ファイスト氏の記事がそれにあたり、これは幸いなことに、内容の一部はオリジナルの英語記事が、Finale開発元のMakeMusic社により、2024/9/16現在、まだ公開されています。
▼Jonathan Feist, Author of “Berklee Contemporary Music Notation” (the finale blog, January 16, 2018 Scott Yoho)
この記事の日本語化にあたり、MakeMusic社やバークリー音楽大学の協力を得て、ファイスト氏本人に再インタビューが行われました。その内容の一部は以下の記事と似たものであったと記憶しています。
▼Jonathan Feist on Wrapping His Head around Contemporary Music Notation (Berklee Online)
https://online.berklee.edu/takenote/jonathan-feist-wrapping-head-around-contemporary-music-notation/
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「クラブ・フィナーレ」にどのような記事が掲載されて来たかということは正確に覚えていませんが、今後も楽譜作成ソフトウェアのユーザーにとって長期的に役立つ公益的な情報は再生する必要があると、今回の学会への参加を通じて痛感しました。
弊社の立場から再発信して差し支えない情報は、過去の記憶を探りながら少しずつ再生したいと思います。