10月8日に公開されたDorico 5.1.60では、MusicXMLインポート時のレイアウト崩れの修正作業を助ける機能と共に、Dorico上でFinaleの高速ステップ入力(MIDIキーボード不使用)を実現する機能が追加されました。
前者につきましては別記事「Dorico 5.1.60は、MusicXMLインポート時のレイアウト崩れを改善するか」に詳述しましたが、ここでは後者の、Dorico上でFinaleの高速ステップ入力を実現する方法について、その具体的な設定方法を解説します。
【目次】
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1. Finaleの「高速ステップ」入力とは
Finaleユーザーは、特にプロの場合、殆どが高速ステップ入力を使用していると言われて来ました。
この高速ステップ入力は、ピッチの指定方法の違いにより、MIDIキーボードを使用する場合と使用しない場合の2つがあります。
後者の場合は、様々なピッチをパソコンの上下の2つの矢印キーだけで指定できるため、Doricoやその他の多くの楽譜作成ソフトウェアが採用するCDEFGABの7つのキーでピッチを指定する方法※に比べると、より速く正確な入力が可能です。
(※この音符入力方法の難点として、頻繁なオクターブ修正が必要となることが挙げられます。Finaleの高速ステップ入力ではそうした問題はなく、同じキーを押し続けることでオクターブを超える音程もスムーズに入力できます。)
これは特に、MIDIキーボードをパソコンに接続できない作業環境、例えば移動中の電車内で楽譜を書いたりする際に便利な機能でした。
基本的にDoricoでは、パソコンの上下矢印キーは譜表間におけるキャレットの上下移動に使用する仕様ですが、今回公開されたv5.1.60では、これをFinaleと同様、入力前のピッチ指定に使用できるようになりました。
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2. Doricoにおける設定方法
以下にその設定方法をご紹介します。
(1)「環境設定>キーボードショートカット>音符の入力」の左にある「>」アイコンをクリックし、項目を展開します。
(※環境設定は、MacではDoricoメニュー、Windowsでは編集メニュー内にあります。)
(2)左ウィンドウで「シャドウノートを1ステップ上げる」を選択し、右ウィンドウで「ショートカット・・・」ボタンをクリックし、パソコンの上矢印キーを押してそれがこのボタン上に表示されたことを確認した上で、すぐ右隣の「キーボードショートカットを追加」ボタンをクリックします。
すると警告メッセージが表示されますが、構わず「OK」ボタンをクリックします。(※ここで「上へ移動」コマンドから削除するキーシーケンスは、後のステップで再設定します。)
(3)これで上矢印キーにより「シャドウノートを1ステップ上げる」が実行可能となりました。
(4)「シャドウノートを1ステップ下げる」も同様に設定します。
(5)左メニューで「上へ移動」を選択します。これはキャレットを上の譜表に移動させるコマンドで、Doricoの初期設定である上矢印キーのショートカットは、前述の(2)で指定解除してあります。
(6)先ほどと同じ方法で、これに「option+上矢印キー」(Windowsでは「alt+上矢印キー」)を指定します。
(7)「下へ移動」も同様に設定します。
(8)お好みに応じて、v5.1.60で新たにキーボードショートカットが指定可能となった「シャドウノートを1オクターブ上げる」には「option+⌘+上矢印キー」(Windowsでは「alt+ctrl+上矢印キー」)を指定します。
(9)「シャドウノートを1オクターブ下げる」も同様に設定します。これらを設定すると、1オクターブ以上でのシャドウノートの移動がさらに楽になります。
基本的な設定は以上ですが、「環境設定>音符の入力と編集>音符の入力>ピッチとデュレーション」にて、「臨時記号、付点、アーティキュレーションを指定:」を「音符入力後」に変更しておくのもお勧めです。
これにより、Doricoの初期設定では音符入力前であった臨時記号の指定を音符入力後に行うこととなり、さらにFinaleの高速ステップ入力の仕様に近づけることができます。
この設定で「高速ステップ入力」を行う場合は、入力小節を選択して「Shift+N」キーを押して「音符入力を開始」状態にすると共に、「K」キーを押して「ピッチをデュレーションの前に指定」状態にします。それにより、上記で設定した上下矢印キーによるピッチ指定が動作するようになります。
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3. ユーザー設定のキーボードショートカットのリセット方法
なお、ユーザーが設定した上記のようなキーボードショートカットは、画面左下の「出荷時の設定にリセット」ボタンをクリックしてもリセットされません。
手元で実験したところ、これをリセットするにはハードディスク内にあるファイルを手動で削除する必要があるようです。Macの場合では以下のファイルがそれに該当します。
Macintosh HD>ユーザー>(ユーザー名)>ライブラリ>Application Support>Steinberg>Dorico 5>keycommands_ja.json
(この作業は開発元や販売代理店のテクニカル・サポートの対象外となる可能性がありますので、自己責任において行なって頂くことをお勧めいたします。)