通常操作では非表示にできない記号を非表示にする方法:段末の親切音部記号を事例に
- tarokoike
- 1 日前
- 読了時間: 3分
更新日:3 時間前
楽譜作成ソフトウェアを使っていると、たまに特定の記号を非表示にしたいと思う場合があると思います。
例えば段末の、音部記号や調号、拍子記号などの親切記号がそれにあたります。これは通常は次の段頭に新しい記号が書かれるので、必須という訳ではありません。音符や休符が混雑している楽譜では、これらを非表示にすることで少しでも横方向のスペーシングを節約することができます。

Finaleの場合、基本的にこれらはファイル別オプションで設定しました。音部記号の場合は、「段末の予告音部記号」のチェックを外すといった具合です。

Sibeliusでは、段末の予告音部記号を選択して右クリックして現れるメニューから、その表示/非表示の切り替えが可能です。
Finaleでの予告音部記号の表示/非表示はオプション画面でのグローバル設定のため、個別に非表示にするには一工夫が必要でしたが、Sibeliusの場合は選択した記号のプロパティを変更するというこの仕様により、個別設定は簡単です。

Doricoの場合、調号と拍子記号については記譜オプション内のそれぞれの項目に段末の予告記号の表示設定に関する項目があります。
しかし、何故か音部記号に関しては、それがありません。ではどうすれば良いでしょうか。
この問題については、Steinberg社のDorico公式フォーラムに面白い対処法が紹介されています。段末の予告音部記号を非常に小さく表示させ、これを他のオブジェクトと重ねることで実質的に見えなくするというものです。
その設定作業は簡単です。まずは対象の音部記号を選択して、下ゾーンのプロパティにて、カスタム尺度に「1」を適用します。

Doricoのカスタム尺度では、仕様上、大きさを「1」未満に設定することができませんので、そのままでは小さく表示されたままになります。例えばヘ音記号の段末の予告音部記号の場合、大部分は首尾よく五線に重なって見えなくなりますが、下の部分が僅かばかり五線からはみ出ることになります。
これは、例えば全音符がある場合は、対象の記号を選択して浄書モードに切り替え、同じく下ゾーンのプロパティにてX軸方向に-3 7/8程度のオフセットを設定することで、全音符の中に段末の予告音部記号を完全に隠すことができます。

これは一見、稚拙でスマートでない方法に見えるかも知れませんが、Doricoについてはカスタム尺度を用いることでオブジェクトのサイズを個別に変更できる可能性がFinale以上に広いという製品仕様のため、この方法は様々な局面で応用できるというメリットがあります。
実はFinaleでも、記譜用フォントにKousakuを用いた日本語ローカライズ版のデフォルトファイルでは、全く同じ方法を用いて、本来の機能では非表示にできない2小節の繰り返し表記の数字「2」を隠していました。

ーーー
多機能なプロ向け製品は、同じ表現を実現するために複数の方法を用いることができる場合が少なからずありますが、その際は最も単純な方法を用いるのが良いかと思います。
その方がトラブルのリスクが少ないですし、年月を経た後に自分がどのような設定を施したかを思い出し易いからです。
そうした意味においても、この「非常に小さくして他オブジェクトに重ねて見えなくさせる」という方法は優れていると思います。