Finaleでは、弱起(アウフタクト)※は新規ファイルに設定する場合はセットアップ・ウィザードの最後、既存ファイルに設定する場合は「書類メニュー>弱起の設定」で設定できます。(※独:Auftakt、Finale英語版ではPickup Measureと表記されます。)
この標準機能「弱起の設定」に仕様上いくつかの問題があることは、これまで多くのユーザーから指摘を受けていますが、何が問題なのか、その回避策は何かということに関する整理された情報が少ないので、この記事にそれをまとめておこうと思います。
なお、本記事はこの「弱起の設定」機能の使用を否定しません。これは弱起を簡単に設定できるという長所もあり、またもし問題が表面化した場合はそれを避ける方法に修正することもできますので、むしろ一定の条件下ではこれを使った方が良い場合もあると考えています。
1.使うべきでない場合:弱起の小節に戻る曲の場合
標準機能「弱起の設定」の問題は、弱起を本来の小節内で余分な拍を非表示にすることで実現している点に起因します。
このため、「弱起の設定」を用いたファイルではプレイバック・ボタンをクリックしてプレイバック・カウンターが動き出してもキャレットは動かず、非表示にした余分な拍が演奏される時間を待たないと弱起の演奏が始まりません。
待てばプレイバックは始まりますので、通常これは致命的というわけではありません。しかし問題は「弱起の小節に戻る曲の場合」で、この場合は弱起の小節に戻った直後に非表示にした余分な拍の分だけプレイバックが中断してしまいます。
このプレイバックの中断を避けたい場合は、後述する拍子記号ツールで設定する弱起を用いることをお勧めします。
2.使って良い場合
上記の「弱起の小節に戻る曲の場合」以外では、基本的に使って良いと思います。
一つだけ注意すべきは、複数五線の曲で弱起の小節が空欄の場合、ここに自動表示される休符と弱起の音符との縦位置(時間軸)がずれてしまうことです。
この問題は、初期設定では空白の小節を見せかけの休符で自動的に埋めてくれるものの、その休符は縦位置が考慮されないというFinaleの仕様に起因します。
この問題は、ここに実際の休符を入力することで解決できます。
四分音符を入力した場合は、これを選択した状態で「R」キーを押して四分休符に変換します。
この事例のように、やや左に寄り過ぎている弱起の音符/休符をもう少し右に移動させたい場合は、後述する「拍図表」を用います。
3.解決策:拍子ツールを使った弱起の設定
これまで述べたプレイバックおよび拍の縦位置の二つの問題は、弱起を標準機能「弱起の設定」ではなく、以下の手順に従い、拍子ツールを使って手動で設定することで解決できます。
既に標準機能「弱起の設定」を用いている場合はそれを解除するため(1)から、用いていない場合は(2)から作業します。
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(1)「書類メニュー>弱起の設定」で「弱起の設定」ダイアログボックスを表示させ、「弱起の取り消し」ボタンをクリックします。
(2)弱起が解除され、他の小節と同じ設定になります。(その際、小節番号も変わることにご注意下さい。これは最後に修正します。)
(3)拍子記号ツールに切り替え、弱起を設定する小節をダブルクリックして拍子記号ダイアログボックスを表示させ、以下のように設定します。
1小節内の拍数を、この事例では「1」に設定(弱起の拍数を指定します。)
拍の音符の種類は、この事例では四分音符に設定。(弱起の単位となる音符の種類を指定します。)
変更する小節範囲を「1小節目から1小節目まで」に設定。(弱起小節の範囲を設定します。)
「表示専用に別の拍子記号を使う」にチェックを入れる。(ここが重要で、これにより弱起小節の表示は、本体部分と同じ拍子になります。)
(4)この事例では上記の設定により、1小節目は実質的には1/3拍子であるものの、表示上は3/4の弱起小節になります。
弱起の四分音符は、選択した状態で「R」キーを押すと四分休符に変換できます。
(5)弱起の拍の水平位置は、他の小節と同様に「拍図表」を使って調整できます。拍図表は、小節ツールに切り替えて右小節に表示された二つのハンドルのうち下のハンドルをクリックすると現れます。
(6)最後に、弱起の小節をダブル・クリックして小節の属性ダイアログボックスを表示させ、「小節番号にカウントする」のチェックを外します。
これで弱起小節は小節番号にカウントされなくなり、作業完了です。
弱起で始まる曲の場合は、曲の最後も不完全小節にして拍数を整合させることがしばしばあります。3/4拍子で1拍の弱起を持つこの曲の場合、最後となる16小節目で、先ほどと同様に以下の処理を施します。
1小節内の拍数を「2」に設定(弱起の拍数1と足し合わせて3になる数です。)
拍の音符の種類は四分音符に設定。
変更する小節範囲を「1小節目から1小節目まで」に設定。(ここは別のオプションを選んで16小節目を指定しても構いません。)
「表示専用に別の拍子記号を使う」にチェックを入れる。
(なお、これは標準機能「弱起の設定」を用いた場合でも自動的には設定されませんので、必要に応じて手動で設定します。)
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拍子ツールを使った弱起の設定は、プレイバックおよび拍の縦位置の問題は生じないものの、拍や小節番号の設定に手間が掛かるという難点があります。
拍の縦位置の問題は、見せかけの休符を実際の休符に置き換えることで簡単に解決できますので、プレイバックの問題さえ気にしないのであれば、簡単に設定できる標準機能「弱起の設定」を使うのが良いかと思います。