前の2回の記事では、いずれもFinale v27のライブラリについて触れましたが、今回はライブラリそのものについて踏み込んでみます。
Finaleのライブラリは、あるファイルで設定した記号や数値情報を書き出し、別のファイルに読み込むことでこれらを移植するためのものです。
使い方としては、「ファイルメニュー>ライブラリを開く」を選択して現れるウィンドウから必要なものをダブルクリックすると、それが読み込まれるという仕組みです。
Finale v27では国際基準SMuFLに拠る約3,000もの音楽記号が新たに追加されましたが、日本独自のKousakuを標準の記譜用フォントに採用している日本語版の場合、せっかく増えたこれらの記号は記譜用フォントをSMuFLフォントであるFinale Maestroなどに切り替えないと使うことができず、その切り替えはやや面倒です。
一応、このような記事もあるのですが、その操作は簡単とは言えません。
▼Finale version 27:Kousakuファイル上でSMuFL記号を使用するには?
一方、Finale v27日本語版では、Finale Maestroで大量に新規作成されたSMuFL記号うちいくつかを発想記号やアーティキュレーションとして予め搭載したライブラリが数多く提供されています。
これらをユーザーが必要に応じてKousakuベースの日本語版ファイルに読み込むことで、記譜用フォントにKousakuを使ったファイル上でもSMuFL記号を簡単に使えるようになっています。
例えば「08_弦楽器用発想記号.lib」を読み込むと、この譜例にあるスナップ・ピチカートなど、弦楽器の特殊奏法で使われる様々な記号が発想記号やアーティキュレーションとして使えるようになります。
Finale各国語版と共通の新規作成ライブラリも数点ありますが、その中で面白いのが、この「12_通奏低音用発想記号.lib」です。
これを読み込むと、三つの「Figured Bass」カテゴリが発想記号に追加されますが、それぞれ上中下の位置に分かれて入力される設定になっていて、もちろん通奏低音の記号を再現したSMuFL記号も登録され、このような音程記号を簡単に入力できるようになります。
簡単な仕組みですが、Finaleの発想記号カテゴリの機能をよく知った人が作ったものだなと感心しました。
なお、前回記事「英語版と日本語版の違い:3.テンプレート」でご紹介したv27用テンプレートには、これらのライブラリを楽器編成に従って予め読み込まれていますので、その点でも従来のテンプレートと比べて利便性が高いと思います。
次の記事では、全てのライブラリ・ファイルについて、その概要をご紹介します。