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執筆者の写真tarokoike

FinaleからDoricoへの乗り換え:移行時の問題点および対応(3)楽譜スタイルの移行不全

Finaleには、五線メニューを選択して任意の小節を右クリックすることで、その小節にスラッシュ表記や「1小節の繰り返し表記」「五線を隠す」などといった楽譜スタイルを適用することができます。今回はこの五線スタイルを適用したファイルをMusicXMLを介してDoricoやSibeliusに移行させた際の挙動について調べてみました。


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【2024/11/8更新】この記事には関連記事があります。宜しければ以下をご覧下さい。

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結論としては、頻繁に用いられると思われる12種類の五線スタイルのうち、DoricoとSibeliusに概ね正常に移行されるのはスラッシュ表記およびリズム表記のみ、しかもそれらもバグ付きという、やや残念な結果となりました。



(※Doricoの場合、初期設定ではスラッシュや小節リピート区間が着色されますが、「ビュー・メニュー>小節リピート領域(スラッシュ領域)を強調」のチェックを外すと、この設定は解除されます。)


前回記事と同様、「ほぼこのまま使える」と感じた結果は青い網掛け、「多少の修正で使える」と感じた結果は黄色い網掛け、「大きな修正が必要、要注意」と感じた結果は赤い網掛けで表示しています。


Doricoの方が「1小節の繰り返し表記」をある程度再現するという点で僅かに優れていますが、基本的には五線スタイルの移行に関してはDoricoとSibeliusはほぼ全く同じ挙動を示します。


Dorico

Sibelius

01. スラッシュ表記

基本的には移行されるが、複数五線に適用時に間違った小節に適応されてしまう。

Doricoと全く同じ。

02. リズム表記

基本的には移行されるが、複数五線に適用時に間違った小節に適応されてしまう。

Doricoと全く同じ。

07. 1小節の繰り返し表記

小節リピート領域として移行されるが、音符は手動で削除する必要がある。

全く移行されない。

08. 2小節の繰り返し表記

小節リピート領域として移行されるが、音符は手動で削除する必要がある。

全く移行されない。

12. 強制的に五線を隠す(空け)

全く移行されない。

Doricoと全く同じ。

13. 強制的に五線を隠す(詰め)

全く移行されない。

Doricoと全く同じ。

14. 特殊な符頭

菱形と三角形のみ移行される。その他の5種類は移行されない。

Doricoと全く同じ。

15. 符尾なし音符

連桁の分離まではなされるが、符尾は消えず移行されない。

Doricoと全く同じ。

17. x型符頭

移行されるが、連桁が分断されてしまう。

Doricoと全く同じ。

18. 空白の小節

音符は消えるが、全休符も消えてしまう。

音符が消えて全休符のみが残る状態で、完璧に移行される。

20. Finale Alphanote(音名)

全く移行されない。

Doricoと全く同じ。

21. Finale Alphanote(階名

全く移行されない。

Doricoと全く同じ。

五線を隠す機能はDorico、Sibelius共にありますが、それらはMusicXMLでの互換性はないようで、インポート後に改めて設定する必要があるようです。


なお、DoricoやSibeliusには、Finale譜例の14~15小節目にあるように組段内の特定の小節のみを五線ごと隠す機能は無いようで、これは空白の図形を被せるなど、別の機能を使って再現する必要があります。


音名や階名を表示させる符頭であるAlphanotesについても同様で、インポート後に類似の符頭に改めて設定し直す必要があります。


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スラッシュ表記およびリズム表記について要注意なのは、五線が1本しかない場合は問題なく移行されるようですが、ピアノやハープのような複数五線からなる楽器の場合は適用されるべき範囲が1小節ずれてしまうという問題があることです。


こちらがオリジナルのFinaleファイルの状態です。



これをMusicXMLで書き出して、DoricoやSibeliusにインポートすると、いずれも低音部譜表において適用範囲が1小節後ろにずれているのが分かります。




これはおそらくバグで、DoricoとSibeliusは全く同じ挙動を示し、MuseScoreでも若干挙動が異なりますが、類似の問題が見られました。


主にビッグ・バンドのスコアで問題となるかと思います。これも移行先の楽譜だけを見た限りでは一見正常に移行されているように見えてしまうので、前回記事で取り上げた強弱記号と同様、予め問題を認識していないと見落としてしまう危険性が高そうです。

この問題は、グループ化された五線にて一般的に起こる問題のようです。例外的にタブ譜では起こりませんが、ピアノやハープ、オルガンのように予めグループ化された楽器のみでなく、自分で複数の五線をグループ化して作成した楽器の場合にも発生しますのでご注意下さい。


なお、これが発生するのはスラッシュ表記およびリズム表記のみのようで、x型符頭や「空白の小節」では問題は起こりませんでした。

【お知らせ】

Finaleからの乗り換えを支援するDorico集中講座をZoomオンラインにて開催中。2期目となる2024年11月開講コースの開催が決定しました。詳細はこちらのページをご覧下さい。

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