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執筆者の写真tarokoike

FinaleからDoricoへの乗り換え:移行時の問題点および対応(1)楽譜レイアウトの変化

FinaleファイルをMusicXMLを介してDoricoなどの他ソフトウェアに移行させる際には、様々な問題が発生する可能性があります。弊社がこれまで調べた限りでは、例えば前回記事で紹介したDorico開発元のSteinbergが公開する解説動画で指摘されている3点も含め、以下が考えられます。


  1. 楽譜レイアウトの変化:組段間における縦方向のスペーシングに問題が生じることがある※

  2. 記号の移行不全:インポートされないものも少なくない:発想記号、アーティキュレーション、変形図形

  3. 楽譜スタイルの移行不全:インポートされないものも少なくない:一本線、五線を隠す、など

  4. 記譜用フォントの変化:KousakuやChaconneはグローバル設定の記譜用フォントとしては使用できない

  5. プレイバック情報の移行不全:繰り返し記号の多くは再設定が必要。特にドラムセットは音色の再設定が必要な場合がある。

  6. コード・サフィックスの移行不全:テンションなど各要素の位置情報が移行されない

  7. ギタータブ譜の表現変化:ギタータブ譜は、標準機能では日本式ベンドなどが表現できない

  8. 記号インポート先カテゴリの変化:一部の記号は意図しないカテゴリにインポートされてしまう※

  9. 記譜表現の変化:スラーの位置がずれるなど、記号が意図しない形で再現されることがある

  10. ファイル情報の移行不全:スコア・マネージャーのファイル情報は、そのまま移行されない※


Steinberg解説動画で指摘されている問題


これから何本かの記事に分けて、これらの中から特に重要と思われる件について、問題の詳細と対策をまとめてみたいと思います。


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【2024/11/8更新】この記事には関連記事があります。宜しければ以下をご覧下さい。

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1.楽譜レイアウトの変化


・通常スタイルの楽譜の場合

レイアウトの件は、処理が少々面倒である点で問題が大きいと思えます。これはSteinbergの解説動画が指摘する通り、ヘッダーとページ番号がFinaleではページ・マージンの外側に配置できるのに対し、Doricoでは内側に表示するという製品仕様の違いによるものです。


Finaleのページ・マージンとページ番号との位置関係は、通常は以下のようになります。赤い矢印の指すポイントがページ・マージンの四隅で、赤い四角で囲まれたページ番号は楽譜エリアの外側、つまりページ・マージン上に配置されていることが分かります。


こちらが同じファイルをMusicXMLでDoricoにインポートした状態で、この場合はページ番号は2ページ目の左上、ページ・マージンの内側に配置されていることが分かります。


これを元のFinaleで開いた際と同じレイアウトに戻したい場合、まずはインポート後にDoricoで上下方向に広く取られたページ・マージンを半分程度に減らして、中央の楽譜エリアをより広く確保します。


そして、楽譜エリアの最下段にページ番号のフレームを新設し、さらに必要に応じて最上段に曲名などを表示させるヘッダーのフレームを新設することになります。


下の図では、この処理を施しています。実質的な楽譜エリアの下端は青い矢印で示したポイントで、この事例では楽譜エリアの下にページ番号を挿入するフレームを配置し、さらに両者の距離を調整するスペーサーとして、空白のフレームを挟み込んでいます。


また、Doricoでは初期状態ではタイトルの下にはサブタイトルではなくフロー・タイトルが表示される仕様のため、これも必要に応じてページテンプレートにてFinale仕様のフレームを自分で組み直す必要があります。これについてはSteinberg解説動画にある通りです。


なお、Sibeliusの場合はFinaleと同様、楽譜エリアを超えてページマージンの中にページ番号を配置するのが容易です。今回はインポート直後にページ番号がやや上にずれて配置されましたが、この場合はページマージンは編集せずにページ番号だけを移動させるのみで修正が完了できるかも知れません。



・楽譜内にテキストを多用している場合

多くのファイルは上記の処理でDorico仕様のレイアウトに修正できると思われますが、面倒なのはテキスト系の発想記号を多用した楽譜で、この場合はこれらに対して衝突回避の自動機能が働くせいか、レイアウトは大きく崩れることがあります。


こちらが元のFinaleファイルです。


これをMusicXMLとしてDoricoにインポートすると、このようになりました。


この場合は、レイアウトオプション・ダイアログボックスでいくつかのパラメータを操作することで、組段のレイアウトを修復できます。


  • 「レイアウトオプション>ページ設定>ページ余白」で、上下と左右をそれぞれ7mm、15mmに変更。

  • 「レイアウトオプション>垂直方向のスペーシング>最小値」の二つのパラメータを「-999」に変更。もしくは「隣り合う譜表と組段の衝突を自動的に解消する」のチェックを外す。

  • 「レイアウトオプション>垂直方向のスペーシング>両端揃え」の二つのパラメータを「100」に変更。

  • 「レイアウトオプション>譜表と組段>配置設定」で、組段あたり小節数を4小節、フレームあたりの組段数を6段として、「フレームの高さに合わせて組段の数を増減する」のチェックを外す。


(上記は「譜表に付くテキスト」が多いこのファイルの場合の処理で、通常は自動処理はなるべくONのままの方が良いと思います。)



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なお、このファイルは発想記号、アーティキュレーション、変形図形、そしてコード・サフィックスの一部についてインポートのテストを行なった際に用いたファイルですが、このスクリーンショットを見ると、これらについても元のFinaleファイル通りにインポートされない記号が数多くあることが分かります。


これについてはまた別の重要なテーマとなるので、次の記事で詳細に触れたいと思います。

【お知らせ】

Finaleからの乗り換えを支援するDorico集中講座をZoomオンラインにて開催中。2期目となる2024年11月開講コースの開催が決定しました。詳細はこちらのページをご覧下さい。

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