FinaleではMusicXMLファイルの一括変換という機能はあるけど、同じことはPDFではできないのか?というお問い合わせをいくつか頂いています。
設定がやや面倒、かつ動作も若干不安定ですが、これはFinaleScriptを使用することにより可能です。今回の記事では実際のスクリプト例を取り上げつつ、その設定方法と使用上の注意点をご紹介します。
【目次】
2.PDFに一括変換する方法
(1)スクリプトのダウンロード
3.FinaleScriptでPDFに一括変換する際の注意点
(1)Mac版
(2)Windows版
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1.なぜPDFでの保存が必要なのか
Finaleの開発が終了となったということは、v28などの新製品が今後提供されなくなると共に、最終バージョンとなったv27が今後のOSのアップデートに対応しなくなることを意味します。
最終バージョンのFinale v27は今のところ、Mac版については動作環境外とされるmacOS 15 Sequoia上でも大きな問題なく動作しているようです。
また、Windows版についてはOSのバージョンアップがmacOSほど頻繁ではなく、また元々Finaleの動作はWindows OSのバージョンアップに影響を受けにくい傾向があるため、たぶん次期Windowsが提供されたとしても、正常動作する可能性の方が高いのではないかと推測します。
OS対応よりも重要な問題はむしろ、ライセンス認証サービスがいつまで提供されるかが不明であるという点です。
Finale開発元のMakeMusic社は、Finale Sunset FAQにて2024年8月28日付で「Finale authorization will remain active for the foreseeable future(Finaleのライセンス認証システムは、当面の間は有効なままとなります)」とアナウンスしていますが、この「当面」がいつまで続くかについては、何の保証もありません。
もしライセンス認証サービスが終了となった場合、ユーザーが現在使用中のライセンス認証済みのFinaleには影響はないものの、例えばパソコンを新規購入してそこにFinaleを新たにインストールした場合はランセンス認証ができず、30日後には印刷、画像書き出し、保存など、エクスポートの一切ができなくなります。
なのでFinaleユーザーとしてはOSをバージョンアップせず、ライセンス認証も解除せず、全く現状を変えずにFinaleを運用し続ける必要がありますが、どんなに大事に使ってもパソコンはいつか壊れますので、それまでに重要なファイルは他の楽譜作成ソフトウェアに移行できるように、MusicXMLファイルでのバックアップを作成しておく必要があります。
記事の冒頭でも述べた通り、これについては「MusicXMLファイルの一括変換」という機能があります。これにつきましては以下の動画でその方法をご紹介しています。
しかし、これまで別記事で解説して来たように、MusicXMLでの再現性は十分でない場合が多いため、これとは別に現状のFinaleファイルの表現をそのまま保存するために、同じファイルをPDFでも保存しておくことが必要となって来ます。
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2.PDFに一括変換する方法
(1)スクリプトのダウンロード
Finaleには、「MusicXMLファイルの一括変換」のようにフォルダに配置した複数のファイルを一括でPDFファイルに変換するための直接的な機能はありませんが、FinaleScriptという自動処理機能を用いることで、複数のFinaleファイルを自動的にPDFに一括変換するスクリプトを組むことは可能です。
実のところMakeMusic社でも、これを行う方法を紹介したFAQ記事を2024年10月23日に公開しています。
▼Batch PDF export via Finale Script
この処理をFinaleに行わせるにはユーザー自身がスクリプトを書く必要がありますが、スクリプトを書くのにはそれなりの専門知識が必要のため、この記事ではMakeMusicが作成したスクリプト・ファイルが無料ダウンロードできるようになっています。
しかしこのサイトで提供しているスクリプトはFinale英語版のもので、試したところFinale日本語版では正常動作しませんでした。
なので、これを参考に弊社でFinale日本語版でも同じ結果が得られるスクリプトを作成してみました。これは以下より無料でご提供していますので、お試し頂ければと思います。
【注意】弊社はこのスクリプトの動作を保証せず、サポートもご提供いたしません。これはあくまでヒントと考え、動作しない場合はユーザーマニュアルを参考に記述を変えてみるなど、各自で解決策を探ってみることをお勧めいたします。
(2)スクリプトのインストール方法
このzipファイルを解凍すると、以下の4つのファイルが入っています。
フォルダからpdfファイルへ一括変換(サブ)mac.xml
フォルダからpdfファイルへ一括変換(メイン)mac.xml
フォルダからpdfファイルへ一括変換サブwin.xml
フォルダからpdfファイルへ一括変換メインwin.xml
末尾にmacとあるのがMac用、winとあるのがWindows用です。また、「メイン」とあるのはフォルダの一番上の階層に配置された.musxファイルのみをPDF化するスクリプトで、「サブ」とあるのはその下のサブフォルダの中身までPDF化するスクリプトです。(ただし、エクスポート先は全て一番上の階層のフォルダ上になります。)
Finaleを終了させた状態でそれぞれのファイルをこちらのスクリーンショットにある場所にコピーして、Finaleを起動し、動作をご確認ください。
【Mac版の配置】
/Users/(ユーザー名)/Library/Application Support/MakeMusic/Finale 27/FinaleScript/一括処理
【Windows版の配置】
C:\Users\(ユーザー名)\AppData\Roaming\MakeMusic\Finale 27\FinaleScript\バッチ処理\
上手くいけば、このように動作します。
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3.FinaleScriptでPDFに一括変換する際の注意点
FinaleScriptは元々動作が不安定で、同じフォルダに適用しても、正常動作することもあれば、しないこともあります。「正常に動作すればラッキー」程度に考えた方が良いかと思います。
一応、弊社環境では正常動作を確認しましたが、処理が途中で止まってしまう場合もありました。この場合は適時、手動で必要なボタンをクリックしてやると処理が再開するかと思います。
また、このスクリプトはFinaleのグラフィック・ツールからのPDFエクスポートを自動化したものですが、この方法では元々、表示している楽譜のエクスポートしかできません。パート譜については別ファイルにするか、あるいはこのスクリプトを使用せず手動でPDF化する必要があります。
OSごとの使用上の注意点は以下となります。
(1)Mac版
MakeMusicの記事によると、この種のスクリプトを動作させるためにはmacOSのシステム環境設定を開き、以下の2点の設定を施す必要があるようです。
・「デスクトップとDock>デスクトップとステージマネージャ>ステージマネージャ」をOFFにする。
・「プライバシーとセキュリティ>アクセシビリティ>Finale」をONにする。
FinaleのMac版では、おそらくはmacOSのセキュリティ機能との競合により、以前よりFinaleScriptが正常動作しない(あるいはmacOSのバージョンアップ後に既存のスクリプトが動作しなくなる)ことが多くありました。
今後のmacOSのバージョンアップによって、このスクリプトも動作しなくなる可能性があります。この方法でPDFファイルを作成したい方は、作業が終わるまでは、macOSの現状変更は例えマイナー・バージョンアップであっても一切避けることをお勧めします。
(2)Windows版
Windows版のFinaleでは、FinaleScript使用時のファイルの保存先は、直前の作業で保存したファイルの場所が指定される仕様とのことです。従って、スクリプトを動かす前に何でも良いので適当なファイルを開き、これを任意の場所に保存するという作業が必要です。
とりあえずデスクトップなど分かり易い場所に「Finale Batch PDF」みたいな名称のフォルダを作成しておき、起動パネルから開いたデフォルトの新規ファイルをそこに保存するといった作業を行った上で、このスクリプトを実行してみて下さい。
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弊社ではFinaleのテクニカル・サポートやレッスンを需要がある限り継続していく業務上の必要から、Finaleの動作環境はMac & Win共に保全していく方針です。
しかし私個人としては既に別の楽譜作成ソフトウェアに乗り換えてしまったため、Finaleを主役とした記事を書くのは、もしかしたらこれが最後になるかも知れません。
これまで36年間に亘り、この素晴らしい製品を開発し、提供し、支えて来てくれた全ての関係者の皆様に深く感謝しつつ、筆を置きたいと思います。
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