近頃の楽譜作成ソフトウェアはプレイバックの音質が向上したため、わざわざMIDIファイルで書き出してDAWで仕上げなくても、楽譜作成ソフトウェア上で十分な仕上がりのモックアップを制作できるようになりつつあります。
その際に気になるのは、1番/2番括弧、プレイバック時のセーニョやコーダなどの反復記号の設定です。
Finaleには、これを視覚的に確認するための「演奏順序のチェック」という機能がありました。
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Doricoの場合、これに該当する機能はありませんが、「浄書オプション>小節番号>リピート」の中に「リピートセクションの小節番号」という設定項目があり、ここで「リピートをカウント」を選択することで、リピート時の小節番号が譜面上に括弧書きで追記されます。
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しかしこの機能でリピートセクションの小節番号させた場合、全ての小節番号を数えながら演奏順序を辿っていくことになるので、リピート記号を多く用いた曲の場合は一つの小節に三つ以上の小節番号が表示されるなど複雑になり、確認に時間が掛かることもあります。
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例えばこのような曲があるとします。
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曲の構成は、大体以下のようなものです。
A - B (Vocal)
→D.S. al Coda 1
A (Pf. Solo 32 bars) - B (Vocal)
→To Coda 1
D (Vocal)
→D.S.S. al Coda 2
B - C (Vocal)
→To Coda 2
E (Vocal)
この演奏順序をプレイバックを聴いて確認する場合は、まず4ページ目の「D.S. al Coda 1」の直前からプレイバックすることになりますが、その場合は「To Coda 1」が正常動作するかを確認するために、1ページのダルセーニョに戻ってA - Bセクションをもう一度聴かなければなりません。
Doricoのプレイバック・テンポを最大のBPM=500に上げたとしても、やはり一定の時間が掛かってしまいますし、問題が見つかって修正に手間取る場合は何度もこれを繰り返さなければならず、とても時間が掛かってしまう恐れもあります。
一つの解決策としては、この演奏順序だけを1ページ内で再現したテスト・プロジェクトを新規作成し、そこで演奏順序の確認を行うという方法があるかと思います。
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このテスト・プロジェクトで思い通りの演奏順序が再現できたら、元のプロジェクトで全く同じ設定の反復記号を設定すれば良いということになります。
ここに挙げた事例の場合、BPM=500に設定すれば、最後まで通して聴いても29秒しか掛かりません。「リピートをカウント」にチェックを入れて表示させたリピートセクションの小節番号を確認するのも比較的容易なので、好きなだけ試行錯誤を繰り返すことができます。
この方法はDoricoに限らず、他の楽譜作成ソフトウェアでも使えると思います。このようなテスト・プロジェクトを何パターンか作ってみると設定の勉強になりますし、忘れた際もこれを見れば思い出し易くなるかと思います。
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なお、リピート記号が小節内のどの拍に割り当てられているかについては、注意が必要です。
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例えばこの譜例で「To Coda 1」が前の小節にずれていたりすると、そのジャンプは正常動作しなくなります。「リピートをカウント」にチェックを入れていると、リピートセクションの小節番号が同一小節で連続するなど正常表示されなくなることで、そのエラーの発生が一目で分かり、便利です。
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(この「To Coda 1」の位置ずれがもたらすエラーは、私がテストに行き詰まった際、Steinbergフォーラムのメンバーの助言を得て解決できた際に得た情報です。同フォーラムのメンバーにはこの場をお借りして改めてお礼申し上げます。)