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執筆者の写真tarokoike

Doricoにおけるアーティキュレーションの取り扱い(マルカート・スタッカートやテヌート・アクセント等の入力)

最近、複数の元Finaleユーザーの方々より、Doricoのアーティキュレーション・パレットにある記号数がFinaleより少ない件について幾つかのご質問を頂きました。


具体的には、例えばDoricoではマルカート・スタッカートやテヌート・アクセントをどのように入力すれば良いかというご質問です。


アーティキュレーションについては、FinaleとDoricoではその扱いが少々異なるため、それを知っておいた方が、Doricoでの作業がし易くなるかと思います。


【目次】


ーーー


1.アーティキュレーションに関するFinaleとDoricoの定義の違い


Doricoのツールボックスを見てみると、アーティキュレーションは基本的な種類しか登録されていません。

一方、上の図でも分かる通り、例えばジャズ・アーティキュレーションなどは、右ツールボックスの中に装飾音として登録されています。これはDoricoが、アーティキュレーションにFinaleとは異なる定義を与えているためです。


Doricoのユーザーマニュアルには以下のような記述があります。


Dorico Pro では、アーティキュレーションは、あらゆるインストゥルメントに共通する形で音符の演奏方法を変化させるものと定義しています。ボウイング指示、ハーモニクスやタンギングなどの指示は、個別のインストゥルメントグループに適用されるため、Dorico Pro では演奏技法と位置付けられています。(「アーティキュレーション」)


Dorico Pro におけるジャズアーティキュレーションは、ジャズ特有の装飾音を、特に金管楽器に関して幅広くカバーしています。

これらはジャズ⁠アーティキュレーション⁠と呼ばれてはいますが、アーティキュレーションというよりむしろ装飾音として機能します。これらの演奏技法は音符のデュレーションやアタックではなくピッチに変化を与えるためです。このため、これらは Dorico Pro においては装飾音と見なされます。これらは装飾音パネルに収められ、装飾音ポップオーバーを使用しても入力できます。(「ジャズアーティキュレーション」)


この観点から改めてFinaleの「アーティキュレーション選択ダイアログボックス」をみると、ここに登録された70種類以上の記号のうちDoricoの定義によるアーティキュレーションは基本的に15種類だけで、指番号やピアノのペダル記号などアーティキュレーションではない記号も多く含まれています。

Finaleでは特定の音符に付加する記号を「アーティキュレーション選択ダイアログボックス」内に登録しているようで、音楽的な理由ではなくプログラム上の理由で記号を分類していたのかも知れません。


Doricoのように似たような入力操作をする記号があちこちに散らばっていないという意味においては、これは合理的と言えるかも知れませんが、本来はアーティキュレーションではない記号も一括して「アーティキュレーション」と呼んでいるところに、初心者にとっての分かり難さがあったように思います。

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2.複合アーティキュレーション入力の基本


Doricoでは、マルカート・スタッカートやテヌート・アクセントは、マルカート+スタッカート、テヌート+アクセントといった形で複数のアーティキュレーションを組み合わせて入力するのが基本かと思います。



テヌート・スタッカートについては、Doricoの仕様上、テヌートとスタッカートを同じ音符に付加できないため、一番右下にテヌート・スタッカートとして独立した一つの記号が用意されているのかと思います。

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3.既存の複合アーティキュレーションのグリフを使う


アーティキュレーションと音符との位置関係や、複数のアーティキュレーションにおける相互の位置関係は浄書オプションで設定可能ですが、全ての記号にとって最適な設定値を見つけるのが困難な場合があり、その場合は最終的には手動調整に頼らざるを得なくなることもあります。


そういった面倒を避けてFinaleのようにあらかじめ一つにまとめられたマルカート・スタッカートやテヌート・アクセントを使いたい場合は、SMuFLフォントにあるこれらの記号を「演奏技法を編集ダイアログボックス」に登録することができます。


こちらの譜例に赤い矢印で示したものが、演奏技法として登録したアーティキュレーションです。ポップオーバーテキストも登録しておけば、これらは例えばShift+P「tenuto accent」などの操作で簡単に呼び出すことができます。



しかし浄書で使う場合は、Finaleの時に問題となったのと同様、本来は適正位置が異なるとされる複数の記号を一つのグリフにまとめたこれらの記号は浄書的に正しくないとされる表現をもたらす場合がありますので、注意が必要です。



アクセントのような大きな記号は常に五線外に配置しますが、テヌートのようなコンパクトな記号は、入る場合は五線内に配置するのが、一般的な記譜表現です。なお、Doricoでは浄書オプション内に、これらのルールの適用/非適用をユーザー設定する項目があります。

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