ソフトウェアに予期せぬトラブルが発生した場合、その解決策としてまず思い浮かぶのは、ソフトウェアの再インストールだと思います。
ここで重要なことは、再インストールには「上書きインストール」と「アンインストールを行った上でのインストール」の2種類があり、前者ではユーザー階層のフォルダは更新されないということです。
例えば、前回記事で取り上げた初期設定ファイルに原因がある場合、上書きインストールでは問題は解決しません。
HDD直下にあるルート階層のファイルに問題が発生している場合は、上書きインストールにより解決する可能性が高いですが、ユーザー階層にある初期設定ファイルが原因の可能性がある場合、まずは初期設定ファイルの削除（再構築）を行います。
初期設定ファイルの削除（再構築）で問題が解決しない場合、初期設定ファイルも含めたアンインストールを行った上で再インストールを行う場合もあります。
これはパソコンから一旦、そのソフトウェアの構成要素を全て削除してゼロの状態にすることを意味し、例えばFinaleテクサポ用語では、これを「クリーン・インストール（Clean Install）」と呼んでいます。
上書きインストールとクリーン・インストールの効果の違いを理解した上でこれらの方法を使い分けるには、ソフトウェアのインストールから使用開始に至るプロセスを理解しておくと良いかも知れません。
例えばFinaleをはじめとしたMakeMusic社製の楽譜作成ソフトウェアの場合、インストールから使用開始に至る基本的なプロセスは以下で、MacもWindowsも基本的な仕様は非常に似ていることがわかります。
１．インストール時
１ー１．アプリケーション本体は以下にコピーされる。
Mac：「アプリケーション」フォルダ（「Finale.app」etc.）
Windows：「Program Files」フォルダ（「Finale.exe」etc.）
１ー２．補助ファイルは主に以下のデータフォルダにコピーされる。
Mac：「Application Support」フォルダ（「Finale 27」フォルダetc.）
Windows：「Program Data」フォルダ（「Finale 27」フォルダetc.）
２．アプリケーションの初回起動時
２ー１．データフォルダにコピーされた補助ファイルの一部が、以下にコピーされる。
Mac：ユーザー階層の「Application Support」フォルダ（「Finale 27」フォルダetc.）
Windows：「Program Data」フォルダ（「Finale 27」フォルダetc.）
２ー１．初期設定ファイルが、以下にコピーされる。
Mac：ユーザー階層の「Preference」フォルダ（「com.makemusic.finale27.fprf」etc.）
Windows：「ユーザー」フォルダ（「FINALE.INI」、「FINMIDI.INI」etc.）
上記「２．アプリケーションの初回起動時」にコピーされる初期設定ファイルなどのファイルは、手動で削除しても次のソフトウェア起動時に自動的に再構築されますので、その削除はソフトウェアの動作に悪影響を与えません。
なお、特にMac版Finaleでは、ライブラリのファイル（.lib）などユーザーが自作した補助ファイルは、初期状態では上記「２ー１．」のユーザー階層のフォルダに保存されます。そのため、ユーザーが自作したファイルがあれば、クリーン・インストール前にこれらを一時退避させる必要があります。
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Windowsの場合はOSにアンインストール機能がありますが、これは少なくともMakeMusic製品についてはユーザー階層の初期設定ファイルなどまではアンインストールしてくれません。
なので、上書きインストールしても、元々インストーラーではなく起動後にアプリケーションによりユーザー階層にコピーされる仕様の初期設定ファイルなどは、上書きされずアンインストール前のものが継続することになります。
冒頭に述べた「初期設定ファイルに原因がある場合、上書きインストールでは問題は解決しない」というのは、そうした理由によるものです。
Macの場合は基本的にソフトウェアのアンインストールはユーザーが手動で行う必要があるので、作業こそ面倒ですが、上記のような混乱がない分、扱い易いかも知れません。
ご参考までに、代表的な楽譜作成ソフトウェアのアンインストールの方法を以下に掲載しておきます。
【Finale】
【Sibelius】
【Dorico】
【MuseScore】