以前に公開した「さまざまな音源の聴き比べ(GIFF、GPO5、NotePerformer、BBCSO Discover)」という記事では、Finaleに同梱のデモファイルであるJ.S. Bachの「Air」を事例に各種音源を比較試聴しましたが、今回はジャズ向けの外部音源について調べてみましたので、この記事にその結果をまとめておきます。
使用した音源はFinaleに同梱のGarritan Instruments for Finale(GIFF)の他、以下の2つです。事例には、再びFinaleに同梱のデモファイルから、今度は「Jingle Bells」を用いました。
・Garritan Jazz & Big Band 3/ARIA(JABB3)(2010年7月発売、¥25,531、DLサイズ約1.2GB)※
・NotePerformer 4(2018年6月発売、¥21,967、DLサイズ約700MB)※
※価格は2024年4月現在のものです。
まずはこちらの動画をご覧下さい。3種類の音源を数小節おきに切り替えて再生しています。
1.初期設定における各音源の問題点
初期設定で各音源を聴いてみると、正直なところ、いずれも何だかイマイチな印象を受けました。
(1)GIFF
まずFinaleに同梱のGarritan Instruments for Finale(GIFF)については、それなりにバランスは取れているものの、全体的にサウンドに質感が欠けていて、個々の楽器について音のクオリティが今ひとつなのかなという気がします。
しかしGIFFはFinaleを買うとついてくる「おまけ」のようなものなので、それでこのサウンド・クオリティであれば、まぁ良いのかなと思います。
(2)Note Performer 4
Note Performer 4については、事例曲のようなジャズ曲の場合はリヴァーブが強すぎて、間違った会場に来てしまったかのような居心地の悪さを感じました。
この動画ではリヴァーブ量を初期設定の50%から半分の25%まで減らしたトラックも入れていますが、25%でもまだリヴァーブが強い感じがします。
また、これはあくまで個人的な主観ですが、Note Performerに搭載された元々の楽器の音色は、クラシックのオーケストラ曲などにはとても良くマッチするのですが、ジャズにはちょっと合わない感じがします。
(3)JABB3
ジャズ専用の音源ということで期待したGarritan Jazz & Big Band 3/ARIA(JABB3)ですが、その名に恥じず各楽器の音色はかなりジャズのイメージに近いものの、初期状態のこのトラックでは、ドラムの音量が極端に小さいことが分かるかと思います。
そういえばGIFFでは以前からドラムの音量については問題視されていて、これは2016年発売のFinale v25にてようやく改善されたのですが、2010年発売のJABB3では、もしかしたら問題視されていたドラムの音量の小ささが改善されることなく、今もそのまま残っているのかも知れません。
Finaleの場合、ミキサーを開いてドラムの音量を127に変更し、さらにドラム用にバンク3を設定してそのボリュームを200に変更するというのが音量アップに関する最大限の措置ですが、残念ながらこれを行っても満足のいくバランスには僅かに届かずという感じでした。
2.改善策
Note Performerについては、リヴァーブ・レベルを初期設定の50%から15%にまで落としてみたところ、楽器音に厚みが失われてしまうものの、多少はジャズっぽい響きになった気がします。楽器の音色は変更できないので初期設定のままです。
JABB3については、付属ドラム音源の使用は諦め、ドラムだけFinale v25で改善されたGIFF音源を用いることにしました。ドラムの音量はミキサーで110に設定しましたが、これで足りなければ前述の方法で更なるアップも可能です。
3.結論
単に音のジャズっぽさだけを比較した場合はJABB3に軍配が上がると思いますが、Note Performer 4は
HDD内に占める容量がJABB3の「4.5GB以上」に対して半分以下の「2GB以上」であること
扱い易いこと(ドラムの音量を気にしないで済む)
ジャズもOKレベルの上、クラシック音楽にも強いこと
価格がJABB3に比べて3,500円ほど安いこと(これで一杯飲みに行ける)
といった様々な長所があることを考えると、普通の人が買うのであればNote Performer 4がおすすめかなと思います。
一方、作る楽譜がほとんどジャズだけという人には、やはりJABB3がおすすめです。楽器の音色的にはGarritanシリーズやNote Performerと比べた中では一番ジャズっぽいと感じます。ドラムの音量が極端に小さい欠点は、前述のように多少面倒ではありますがFinaleに同梱のGIFFなど別の音源を使用することでカバーできます。
なお、今回の実験では同じくGarritan製品であるGarritan Personal Orchestra 5(GPO5)、Garritan Concert and Marching Band 2(COMB2)も試してみましたが、この二つについては事例に用いた曲に限って言えば、各楽器間の音量バランスや個別楽器の発声面でプレイバックの質はGIFFにも劣ると感じましたので、記事には取り上げませんでした。これらの音源は基本的にクラシックや吹奏楽に特化したもので、ジャズは苦手なようです。
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